第五話・心の絆。心の支え。

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遊馬、ティータ、束とともにゴーレムの進行を食い止めたのち、作戦中にロストした束謙吾を捜索した。 ゴーレムのレールガンによる砲撃を受けた束は、すでにこの世の人ではなくなっていた。 発見から五時間あまりがたち、時刻は午後10時。 当然ではあるのだが、遊馬は和解し、友人となった束の死に悼み、悔しさのあまりに涙し、塞ぎ混んでしまっていた。 現在はティータと荒木がそばにいてくれている。 本来なら私が彼のそばにいてやりたいのだが、今の私では、遊馬になんて声をかけたらよいのか、解らない。 もしかすれば、声なんてかけなくてもよいのかもかれないが、だが、今の遊馬の姿は余りにも痛々しくて、一緒にいれば、こちらがいたたまれなさに耐えきれず声をかけてしまう気がする。 「私は…肝心なときにたよりにならんな…」 そう、私は一人ごちた。 正直、私は束にそんなによい感情を持っているわけではないし、もはや嫌悪といっても差し支えないほど、私は束が嫌いだ。 だからなのだろうか。 私は、彼が作戦中にロストし、捜索後に遺体で発見された際にも、私はこれといって感情を覚えなかった。 遊馬には、ああいったけれど、私は…遊馬のように束のために涙を流すことかできなかった。 だが、それでも胸がいたくて、苦しい。 遊馬が、泣いているのに。 私は慰めるどころか、そばにいてやることさえしていないのだから。 「モミジ」 部屋の外、宿舎のロビーで物思いに更ける私に、金髪碧眼の小柄だが美しい少女、ティータは声をかけてくる。 「何故、アスマのそばに居て差し上げないのですか?」 まるで用意されていたかのような質問だった。 「私には、遊馬が、束を失った気持ちが分からないんだ。ひどい話だが、私にとっては、嫌いな男が死んだ、それだけでしかないんだ。だから、いてやることは…出来ない」 そう、出来ない。 今の私では、彼を慰めるどころか、傷つけてはしまいかねないのだから。 もう、遊馬を傷つけたくはない。 私は…遊馬が好きだ。 だが、私には彼から好きで居てもらう資格はない。
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