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「そうですの。ですがり、アスマはあなたを求めているんです。私は彼をお慕いしています。ですが、ただそれだけで、私には彼を癒すことは出来ません。ミナミも、一友人では限界があります。あなたしか、アスマを癒せるかたはいないのです」
私のとなりに腰掛けながら、私にそんなことを話す。
しかし、それを聞いたところで、今の私に何が出来るのだろうか。
何も出来ない。
だって、何をなせば遊馬が笑うのか、検討もつかない。
「アスマを深く愛するあなたが、そんな理屈でアスマのもとにいないのは、納得ができませんわ。それとも、モミジとアスマの絆とは、その程度なのですか?」
挑発的な発言だ。
いつもなら怒髪点をつくといった具合の起こりかたを我ながらにするのだらうが、今の私にはなぜかその気が起きない。
「私は、下手に何かをしてアスマを傷つけたくはない。私は昔、ストーンの暴走で…遊馬に大怪我をさせてしまった。だから…………」
「なら、アスマはいつまで泣けばよいのでしょうか」
「ならどうしたらいいんだ!?私には遊馬の辛さが分からないんだぞ!?それで下手に慰めて、なんになるんだ!?遊馬が傷つくだけじゃないのか!?」
「同じ傷を持つ人が慰めても意味はありませんわ。そんなことは同じ傷を舐め合うだけ。今、遊馬に必要なのは、誰よりも深くて、何よりも堅い絆でしょう!?」
「……絆…」
ティータの言葉のお陰で、すっかり忘れてしまっていた絆を思いだすことができた。
そうだ。
どんな対面を装うと、どれだけ意識に差があったとしても、今の私は遊馬に必要とされている。
絆ストーンを胸に抱き締め、目はを閉じてみた。
まるで、絆ストーンが涙しているかのように、悲しみと悔しさが、ひしひしと伝わってきた。
これが、遊馬が今感じている痛みなのだろう。
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