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「私はあなた方に絆の意味を教えていただきました。だから、もう一度、モミジとアスマの絆を感じさせてください。私を救ってくださった、あの暖かな絆を」
私は、感じ取れるのだろうか。
今、遊馬が抱えている絶望を。
かけた心を、悲しみを、痛みを。
私がティータの言葉を受けて考え込んでいると、部屋の方からドアの開く音がして、そちらに振り向いた。
そこには、痛々しいまでに泣き腫らした、儚げな遊馬が荒木に支えられて立っていた。
「遊馬…」
「ごめん、心配かけたね。もう……大丈夫だから」
握りしめた絆ストーンから伝わる、痛々しい悲しみと絶望が伝わり、私とティータに遊馬の嘘が伝わってくる。
勿論、これは遊馬が私たちにこれ以上気を使わせまいと言った、優しくて、失意に満ちた嘘だ。
「アスマ、顔色が優れませんわ。もう少し、お休みになっていてくださいな」
ティータは極力心配を顔に出さないように努めているが、如何せん、ストーンの影響で丸分かりだ。
ティータは、今にも泣きそうになる自らを、必死で律している。
ただ、単純に。
想いを寄せる少年に、仲間に涙を見せないために。
ティータがこんなにも尽くしていると言うのに、私は一体何をしているのだろうか。
ただ、自堕落に束のことを自己完結し、苦しむ遊馬から目を背けているだけではないか。
こんな体たらくで…よく私は遊馬を好きでいられるものだ。
よくも、遊馬と絆を分かち合えているものだ。
私には…過ぎたおもちゃだったのだろうか。
「ティータ、山吹くんのこと、少し見てて」
荒木はそういうと、ティータに遊馬のことを任せて、私のもとへと歩み寄ってくる。
彼女は私の前にたつと、私の頬を一発、強く張った。
ぱちん。と、乾いた音がロビーに木霊した。
「ちょっと面かしなさいよ」
いままでにないほどの怒りが荒木から発せられ、私は思わず身をすくめてしまった。
後輩に、恐怖したのだ。
私は荒木に胸ぐらを捕まれたまま部屋に引っ込むこととなり、私より幾分か背の低い荒木に、想像を越える力で壁に叩きつけられた。
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