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「あなた、山吹くんの仲間なんじゃないの?山吹くんが辛い想いをしているのに、あなたは何で自分の殻に籠ってるのよ?」
「……私は、遊馬を傷つけたくないだけだ」
そのとき、さらに一発の平手が頬に張られた。
先程よりも、さらに強い、強烈な。
あまりの衝撃に鼻血が出てしまったが、そんなことは気にならないほどに、荒木は遊馬と、私のために怒っていることをひしひしと感じた。
「あなたがそうやって距離を取ること自体、山吹くんを傷つけてるのよ」
「そんなこと……」
「ないのなら、どうしてこんな風に私なんかに詰め寄られてるのよ?二年生のエースが、一年生に」
言い返せなかった。
私は、自分の殻に閉じ籠り、少しも遊馬を見ていなかった。
傷つけることを恐れて、遊馬から逃げていた。
「傷つけることが怖いのは、シェアストーンっていう概念のない、私たちだって怖いの。だって、本来の絆は目に見えないものなんだから。それに、あなたが今回亡くなった男子のことが嫌いでも、それが山吹くんと違ったとしても、それがなんなのよ?人間、みんな考え方が違うのは当たり前じゃない」
荒木の言葉にはっとなる。
私は私のあり方、価値観を遊馬に押し付けてしまっていたのだから。
「ありがとう。おかげで、目が覚めた。お前は最高の後輩だ」
そういって、私は彼女の髪を撫でながら少しだけ抱き寄せた。
「わ、先輩!?」
「少しだけ…遊馬に謝るための勇気をくれ」
「本当なら先輩に恋愛相談を持ち込みたいんですけどね」
「私には向かない内容だな。だが、お前の相談なら全力で一緒に悩んでやる」
そういって、私はさらに強く抱き締めた。
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