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「だが、それももうおしまいだ。私はもう恐れはしない。例えお前を傷つけ、私が傷ついたとしても、私は二度と剣を捨てはしない」
「今以上に強くなっちゃうね」
「遊馬、すまなかった。私は、お前の悲しみに共感できなかった。私は、冷たい女だ」
「ううん。束くんが友達だって気づかせてくれたのは、姉さんじゃないか」
確かに、私はそういった。
あのときは建前でもなんでもなく、思ったことを言っただけなのだ。
なんだろうか、なんだか、心が暖かい。
「姉さん、ちょっと…恥ずかしい」
依然として、遊馬を抱き締めたままなので、恥ずかしいのは当たり前だが。
「私もだ。お前の悲しみが、ほんの少しでも和らぐのなら、恥ずかしくても構わん」
「大丈夫、ちゃんと姉さんが支えてくれたから。ティータも荒木さんも。本当に、感謝してる」
そして、そっと私を抱き返してくれた。
背に触れた彼の手に心臓が高鳴り、少しだけ息が荒れる。
だめだ、今まで律してきた全てが、今をもって瓦解し始めた。
私は、少しだけ強引に遊馬の唇を奪った。
恥ずかしくて、遊馬が今感じていることや表情を読み取れなかったが、私はそんなことに構うことなく、ただ、想いのままに、遊馬にキスをした。
彼を愛しながらも、愛されることを拒んでいた私が、逃げることをやめたとたんに、これだ。
数秒して、彼から唇を離した。
「……す、すまない」
「ありがとう。おかげで、怖くなくなった」
遊馬を見ると、嘘ら偽りのない、朗らかな笑顔がそこにあった。
そこに、見計らったかのごとく、ティータと荒木が現れた。
「あら、随分と進展しましたわね、ア・ス・マ?」
どうやらキスシーンを目撃されたらしく、ティータはかなりご立腹のようだ。
「諦めませんわよ。今はモミジでも、いずれはこの私に振り向かせてみせますわ!!」
「略奪愛だねっ!!」
どうにも、この先への進展には時間がかかりそうだし、よきライバルがいるようだ。
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