光へ

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 たまたま、あいつが傘を忘れて、オレがたまたま折り畳み傘を持ってきていたことを忘れて新しい傘を買ってしまったからだ。  そんな、在り来たりな理由で、オレはあいつに出会った。  土砂降りの中、オレはびしょ濡れになったあいつをオレの家に連れてきた。  もちろん、如何わしい感情など無い。簡単に体を温めてもらって、シャワーでも浴びて帰ってもらうつもりだった。  あいつが、あんなことを言わなければ…… 「今日、泊まって行ってもいいですか?」 「……は?」  思わず首を傾げたのを憶えている。  理由なんて、些細なものだ。だけど、あいつの理由は、些細なものじゃなかった。  両親が、交通事故で死んだそうだ。  田舎から上京して暮らしているオレには同居する家族はいない。  17~19歳位の少女だ。  別にそんな如何わしい感情が湧くことは無かったから、オレはそれほど深く悩まずにOKを出した。  変な共同生活が始まったのはそこからだった。
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