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「やばい、やばい。またやっちゃった」
あたしは急ぎ足で通路を駆ける。
パドックを途中で切り上げたから、レースは間近で見たい。
あの均整のとれた、たくましい身体を、じっくり見られなかったのは残念だけど、鮮やかな緑の芝生を駆けぬける姿も美しいにちがいない。
あー、でももう少し堪能したかったなぁ。
なぁんて、薄ら笑いしながら歩いていたら、
ドスン
と、前を歩く人にぶつかってしまった。
「わ、ごめんなさ、」
思わず、『い』の言葉を飲み込む。
「ああ゛!?」
振り返ったその人に目が釘付けになった。
正確には、その人の頭にだけど…。
だって、彼の頭は、鮮やかな芝生色だったから――
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