際会

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「家は、この近くなのか?」 「はい、ここからなら、五分くらいで着きます」 「そうか。まぁ、あの男なら、あんだけ言えば今日はもう絡んでこないと思うが…… 一人で大丈夫か?」 女の子は向こうをちらりと見て、小さくうなずいた。 冷静そうに見えるが、その実、不安なのだろう。 バッグを持つ手に力が入るのがわかった。 「なんなら、近くまで送っていってやるよ」 「でも……」 「オレ、ヒマで散歩してただけだし。って、あー、いきなり現れた男にそんなこと言われても怖いわな。 オレ――」 「知ってます。二年の加藤雄次先輩ですよね、男バス部のキャプテンの」 「あぁ、知ってたんだ」 「カナちゃんが、この前告白したって」 カナちゃん―― 「二週間前に告白してくれた子かな?」 「はい。覚えてるんですか」 「当たり前でしょ。 あの子と友達なんだ」 「同じ、吹奏楽部なので」 なるほど。 ということは、小さなバッグは楽器か。 「ふーん、そうなんだ。 顧問って、音楽の鈴木先生だよな? 結構厳しいって聞くけど」 「はい。でも、部活は楽しいです」 どちらからともなく、歩き出していた。 「カナちゃん、先輩のことすごく優しい人だって、言ってました。だから、先輩に告白する人がたくさんいるって。 いい友達になろうって言ってもらったって。 他の人にも、軽々しくそう言ってるんですか?」 そのまっすぐな物言いに、オレは思わず声を上げて笑った。
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