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彼女は面食らった様子で、訝しげにオレの顔を見た。
「あぁ、悪い。
あんた、面白いな。えぇっと……」
「モリ、シキ」
「あー、モリさん。
あのね、シキちゃん。別に軽々しくみんなに言ってるわけじゃないんだけど」
「そうですか」
「そうです」
「じゃあ、本当にカナちゃんといいお友達になるつもりで言ったんですか?」
「ん。話しかけられれば普通に話すつもりでいるし、何か相談事があるっていうなら聞きもするけど」
いつだって、口先だけのつもりはない。
「よっぽどウマが合わないなって思わない限りは、誰とだって仲よくしたいでしょ。
シキちゃんは違うの?」
シキは少し考えて、肩をすくめた。
「先輩って、面白い人ですね」
「そう?」
「さっき、田中先輩から助けてくれた時、すごく怖い顔をしていたから、カナちゃんが優しい人だよって言ってたのを疑ってたんです」
田中っていうのか、あのチャラ男。
「そんなに怖い顔してたんだ、オレ」
「はい」
そりゃあ、そうだろう。
イライラしていたんだから。
あ、でも。
いつの間にか、忘れていた。
苛立っていたことを。
「ありがとうな」
「はい? 何がでしょう」
礼を言われて面食らったシキが首をかしげる。
「助けてもらったから」
「?」
「――いや、いいんだ。気にしないでくれ」
「そうですか。あ、ここで。
ここが、うちなので」
そう言って立ち止まったのは、ログハウスの前だった。
「ここって、喫茶店?」
「はい」
ランプに照らされた看板には、〈カフェ グリーンホール〉と書いてある。
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