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店内は意外と広く、外見同様、落ち着いた雰囲気のログハウスそのものだった。
丸や四角のテーブルにイスがいくつもあり、三十人くらいはくつろげそうだ。
あちらこちらに花の写真や生花が飾ってあり、奥の方にはライトアップされた庭とオープンテラスも見えた。
カウンター席の中ほどに座り、もう一度店内を見渡す。
「コーヒーは飲めるかい? 何がいいかな」
「あ、ブラックで。あとは、お任せします」
「オッケィ」
エプロンをかけるその胸に、〈イチセ〉とある。
奥の部屋で調理をしているさっきの男の胸には〈ニオ〉。
シキが兄と言っていたから、苗字はモリだろう。
「あぁ、名前かい?」
オレの視線に気づいたイチセが名刺を差し出した。
カフェ グリーンホール
マスター
森 一生
「一生と書いて、〈イチセ〉。ニオは数字の〈二〉に〈生〉でニオ」
二生でニオ。
ということは、シキは。
「もしかして、四に生でシキ?」
「そう。あぁ、知らなかったんだ」
奥で二生が睨んでいるのがわかった。
まずかったか?
「オレは――」
「加藤雄次くん、だよね?」
「あ、はい」
え?
こんな人にも名前知られているのか?
それとも、四生から聞いたことがあるのか?
……いや、それはないだろう。
「どうして、オレの名前を知ってるんですか?」
「あー、やっぱり覚えてないか」
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