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「?」
その反応に引っかかるものは感じたが、二人の兄の微妙な空気を読み取って、オレはそれ以上何も言わなかった。
「――すいません、オレ、金を持ってきてなくて」
「ああ、いいんだよ。私がごちそうしたんだ。
それよりも、ありがとう」
「は?」
「四生が、何か世話になったのだろう?」
一生の言葉に、四生が体を強張らせる。
「あ、いえ、助けてもらったのは、オレの方なので」
「そうなの?」
「はい」
ウソは言っていない。
本当のことも、言っていないが。
「それじゃあ、また今度、きちんと金持ってコーヒー飲みに来ます」
「あぁ、ありがとう。
今度、綾ちゃんも一緒に来るといい」
体が、震えた。
一気に体温が下がった気がした。
そんなオレの様子に、一生は何か感付いたようだった。
「あー。
まぁ、機会があれば、ね」
オレは笑顔で。
「はい。ありがとうございます」
と。
店を出た。
人通りのない公園は、ひどく寒かった。
空には月が出ていたが、
自分の周りだけ、暗い。
そんな気がしていた。
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