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どれだけ歩いても消えない苛立ちと、もやもやした感情。
歩いているうちに少しはクールダウンできるだろうと思っていたのに。
「やっぱ、こんなもんじゃダメか」
誰もいない公園の小路で、軽くステップを刻む。
手は、感覚のみのボールを操り、見えないリングにシュートする。
「はい、スリーポイント」
いや、リングに嫌われたな。
ロストボールを拾いに小走りになりかけて、ふとその声に気付いた。
「ンだよぉ!」
「やめてください」
「――なんだ、痴話げんか、か?」
他人の恋愛沙汰に興味はないが、その、あからさまに相容れない男女の声が気になった。
「だから、別にオレは怒ってないんだぜ? ただ、どうしてこっちに来なかったんだって言ってんだよ」
「先輩には関係ありません。
大体、彼女がいるのにどうしてわたしにそんなことを言うんですか」
男の声には多少抑え気味な苛立ちを感じる。
反対に、女の子の方の声はいたって冷静だ。
「はぁ? イミわかんね。お前オレと付き合ってたんだろ? だったら追いかけてこっちの学校に来るのがホントだろ」
「別れた人の学校に追いかけていくなんて、そんなバカみたいなことするわけないじゃないですか。
それも、好きでもないのに」
「はぁぁ? イミわかんね!
なんだよ、それ。お前いつからそんなアバズレになった? オレにたて突いてんじゃねーよ!」
怒鳴り、男が腕を振り上げる。
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