パン(ミイラ男とバケツの兄ちゃん)

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 とつぜん男が吹っ飛んで来て、ドカッと僕(いたいけな少年、杉田(すぎた)(みのる))のすぐ横の壁にブチ当たった。 ビルの間の汚い通路で一休みしていた僕は、ビクッと固まってしまった。 だって、人間が飛んで来るとは思わないし。 その飛んできて壁に当たった男は、ズルズルと地面にうずくまった。 と、足を引きずる音がして、誰かが近づいて来た。 僕が動けずに見ていると、その男は地面に倒れたままの男の顔のすぐ横にガンッと松葉杖を打ち付けた。 「ヒッ……」 地面で小さくなり(おび)える男の顔は、試合後のボクサーみたいにデコボコだ。 その男が着ている細身のスーツは紺色っぽいけど、汚れてほとんど灰色になっている。 そして、そのスーツ男を投げ飛ばしたらしいのは、汚れや血がにじんだ包帯だらけの男だった。 ソイツは左手にギプスをつけて、頭や腕の包帯があちこちプラプラしている。 それに何か…….、変に怖いオーラが。 コイツ……、妖怪かもしれない。 妖怪(ようかい)包帯(ほうたい)(おとこ)(汚い)と、遭遇した……? なんてね、そんな訳ないか。 ほつれた包帯の間からはよく顔が見えないけど、男の怒り狂ったような目がギラリと光った気がした。 そしてソイツは、スーツ男に覆いかぶさり威圧感(いあつかん)たっぷりに何やら話しかけていた。 包帯まみれになるくらい大怪我してる方が、何で強いんだよ……。 あーあ、僕はただ一休みしようとしていただけなのに。 地面に腰を下ろしたとたんに、何故こんな目に? ここ、建物の間の汚い通路だぞ。 その壁に少しの間もたれるくらい、いいじゃん。 クッソ、家出少年に安息はないのかよっ。
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