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本能寺にて寝ていた信長は周囲が騒がしい事で目が覚め、蘭丸を呼び出した。
「蘭よ、如何した。何故このように騒がしい。見て参れ。」
信長の指示を受け蘭丸は直ぐさま小姓と共に確認を急いだ。
信長含め蘭丸ら小姓衆も家臣の喧嘩、もしくは町でのいざこざ程度にしか考えて居なかった。
しかし、突如鳴り響く雷鳴の如く音により気付く。
「これは謀反か、如何なる者の企てぞ。」
慌てふためく小姓衆を余所に信長は至極冷静であった。
(城介(織田信忠)が別心か、いや……先程の様子からそれは有り得ぬか。)
「報告、既に本能寺は包囲されており、桔梗の旗がたなびいております。明智の者かと。」
「光秀か……ふっ、是非もなし。弓と槍を持て。」
既に包囲され、その上敵は名将明智光秀。状況は最悪、しかし魔王の頭は冴え渡っていた。
(奴の目的が天下ならば膿の首はまず狙いだろう。が、無論城介の首も無ければならぬ。)
信長は蘭丸が来るまでの僅かな時間に既に自らの生を諦め、元織田家当主として、何よりも一人の父として決断を下した。
「蘭よ、本能寺を脱し、貞勝と共に信忠を救援せよ。あやつの事だ、膿を救わんが為向かおうとするが、なんとしても止めよ、逃がせ。そして伝えよ。この言葉を……」
魔王信長の最後の言葉を聞き蘭丸は涙を堪えきれず流した。
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