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信長は包囲された中、蘭丸を逃がす為、坊丸と力丸に援護を命じた。
本能寺は明智軍の包囲にあったが、信長が自ら表に出て参戦し、その首が目の前にある事もあり兵達が信長に殺到していた事、坊丸力丸の陽動により本能寺は脱した。
生きるよりも辛い、逃走をし、織田家の未来の為だけに蘭丸は幾ら堪えようとも霞む視界の中ひたすらに駆けた。
暫くして妙覚寺に着いた蘭丸は村井貞勝、斎藤利治らと共に既に移動しようとしている信忠に合流した。
信忠は信長の小姓である蘭丸が本能寺襲撃の最中、この場に居る事に驚きを隠せなかった。
「信忠様、何処へ行かれるのでしょうか。」
息も絶え絶えに必死に尋ねると信忠は悔しさに顔を歪めながら本能寺の方を向いた。
「本能寺は炎上した……父上の救援は既に間に合わぬ。貞勝の提言もあり、防備に向かぬ妙覚寺から二条城へと移る。」
いつ明智軍が来るか分からない為直ぐさま移動しようとする信忠の前に蘭丸は立ち塞がった。
そして信忠が言葉を発するより早く、蘭丸は叫んだ。
「信長様の最後のお言葉です。『我が息子よ、生きろ。当主として死ぬ事は許さぬ。恥じて死すより生きて汚名をそそげ。父の托す天下、しかと受け止めよ。』と。信忠様今すぐお逃げ下さい。」
蘭丸は叫び終わり、そのまま膝から崩れ落ちると涙を流した。
その様子に周りの兵を含め信忠までもが涙を流した。
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