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視界は少しゆらゆらと揺れましたが、意識ははっきりしていると自分では思っていました。
そんなに距離もないし、事故にさえ気を付ければ、こんな大通りで検問が行われることはないだろうから警察に捕まる心配もない、と考えていました。
静かな夜でした。
車のオーディオからは2010年ころに流行った桑田佳祐の歌が聞こえて、酔った頭にふんわりと入り込んできます。
桑田佳祐が最後の曲を出してからもうだいぶ経つのに、一向に彼の曲が色あせないのはひとえに彼の偉大さのせいでしょう。
外灯の灯りはほとんどなく、ヘッドライトと月明かりだけの静かな夜。開け放した窓からは春の少し暖かくなった風が入り込んできます。
心地よい気分でした。
そんなふうな気分で運転している時、突然視界の隅に青白いものが映りました。
「なんだ?」
と思った時にはそれはフロントガラスの前にあり、大きな音とともに消えました。
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