序 ―復讐法―

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  2038年、政権与党である自民・民主連立政権は、国会に「復讐のための殺人罪の一部例外を認める法案」、通称復讐法案を提出しました。  この法案は復讐ための殺人を、殺人罪の例外として認めるというもので、というのもこの時期日本人の意識の俎上(そじょう)にはある事件がのぼっていたからです。  この前年の2037年、東京都某市においてRという25歳のフリーターの男が、3歳の女の子Yちゃんをデパート内のトイレにて殺害しました。  RはYちゃんの遺体をボストンバッグに入れて、そのまま帰りしな、デパートのそばを通っていた隅田川に投げ捨てました。  数時間後、そばに住む住民が川の淵に引っかかっているボストンバッグを不審に思い、川に降りて中を開けてみると、女の子の遺体が入っており、仰天した住民はすぐに警察に通報しました。  ボストンバッグのメーカー、近隣住民の証言、指紋などから、捜査当局は同じ市に住むRを容疑者に認定、Rは自宅にてテレビゲームをやっていたところをあっけなく御用となりました。  しかしこのすぐ後でした。Rを護送していたパトカーをある男が襲撃したのです。
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