序 ―復讐法―

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 男は手に持っていた猟銃で窓の外からRに向けて5発の銃弾を撃ち込みました。  Rはその場で即死。一緒に乗っていた警察官3人も軽い怪我を負いました。  すぐに駆けつけた警官によって取り押さえられた男は、まったく抵抗せず、ただ上を見上げて涙を流しながら 「やってやったぞ。やってやったぞY」 とYちゃんの名を叫んでいました。  この時取り押さえるのにまわっていた警官はこの男がYちゃんの近親者であると直感しましたが、これはご名答で、男はYちゃんの父親で、33歳の会社員Tでした。  マスコミがこれを報道すると、日本中は前代未聞の事件に少なからずも興奮し、この事件の推移をかたずを飲んで見つめました。  そしてすぐ後、Tの裁判が行われました。  しかしTに同情する国民世論と、陪審員、弁護側の無罪要求も空しく、Tは殺人罪と公務執行妨害で、七年の実刑判決を言い渡されました。
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