序 ―復讐法―

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 これらの事件で幕を開いた日本の復讐殺人合戦は6カ月程に及び、百人近い死傷者を出しました。  復讐につぐ復讐が行われていくにつけ、しかしだんだんと国民の意識の中には復讐をすれば復讐を受けるという恐怖感が染みついてくるようになりました。  現にいじめや労災、強盗や殺人などで家族や友人を失った者たちがそれぞれの思う当事者に復讐の刃を振り向けて行ったのですが、復讐が完了すれば、それはただちに自分が再復讐の対象になることがわかってきたのです。  復讐は法律によって認められている、しかし復讐を行えば自分が復讐される。  そういう論理を国民は自覚していきました。ここに法でない「縛り」が出来上がったのです。  しかしその「縛り」の実情を見ていくと少し単純でない構造が潜んでいることがわかりました。  少し前後しますが2033年の冬、Jという土木作業員の男がMという女子高生を強姦しました。  警察は現場に残っていた精液からDNA鑑定ですぐに犯人のJを割り出し逮捕しましたが、そのすぐ後、女子高生Mは自宅の物置にて自殺しました。
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