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5年間の服役を終えてJが出所した日、Mの遺族にJの殺害を依頼されていたある暴力団はJを拉致し、殺害しました。
司法はこの殺人を復讐として認めました。
そしてこの事件の経緯を知っていた世間はすぐにJの遺族からMの遺族に復讐が行われると感じました。
しかし復讐は行われませんでした。
Jには身寄りがなかったのです。
この事件を知った時世間は復讐法と、復讐の復讐の復讐という連鎖の「縛り」にある一つの隙間を発見したのです。
それは自分が死んでも自分のために復讐してくれる人間がいなければ、この「縛り」は効力を発揮しないということでした。
そしてこの事件でもう一つのことが分かりました。
それは復讐法が事件当事者以外の人間による復讐も認めているという点でした。
この事件ではMの遺族は自分で行動するのでなく、暴力団にJの殺害を依頼し代行してもらったわけですが、司法はこれも復讐の範囲であると認めたのです。
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