5人が本棚に入れています
本棚に追加
涼しい風があたしの髪をなびかせる。
人肌恋しい時期に近づいている気配。
きっとあと一ヶ月もすれば街は白一色になって、恋人同士で身を寄せ合う季節になる。
うらやましい・・な。
急にあたしの目の前に誰かが立った。
「行くぞ。」
落ち着いた、人を安心させるきれいな低音の声。
あたしはとっさに目の前に立つ背の高い相手を見上げた。
桜井 ハル(サクライ ハル)
生まれたときから同じマンションに住んでいる。
しかも部屋は隣同士。
小さいときからよく一緒に遊んでた、というか遊んでもらってた・・?
幼なじみってやつだ。
ハルくんは頭いいし、運動神経もいい。
あたしと違って・・。
あたしたちは高校2年になった。
ハルくんとは保育園も小学校も中学校も今までずっと一緒。
近くの同じ病院で生まれて、住むとこは隣で・・
誕生日も1日違い。
ハルくん家の親もうちの親も「偶然ですねー♪」って嬉しがって意気投合したらしい。
家族ぐるみで仲良しだ。
あたしは、
日向 ななみ(ヒナタ ナナミ)
勉強はそこそこ・・
運動神経もそこそこ・・
全然かわいくもないしっ・・
なにか取り柄があるわけでもない。
ハルくんみたいに完ぺきな人じゃない。
自分に絶望中。
最初のコメントを投稿しよう!