事の始まり

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――キーンコーンカーンコーン……! 6限目の終わりを告げるチャイムが魚山中に響き渡った。その合図とともに、90人の全校生徒が席を立つ。ガラガラガラと、イスを引きずる音があちらこちらから聞こえてくる。魚山中は部活がないので、みんなこれから帰り支度だ。 「ふぅ~。やっと終わったよ……」 隼人が思わずため息をついた。今井に注意された後、寝はしなかったものの、授業内容はまるっきり耳に入っていなかった。ずっと、窓の外を眺めていた。左手で頬杖をついて、右手でシャーペンを回しながら、今日の遊びを考えていた。授業が終わったが、隼人はまだ片付けようとしない。すると、隼人の耳にいつもの声が聞こえてきた。 「おい、隼人? 今日は何して遊ぶ?」 5人の中のムードメーカー、安藤昴の声だった。昴はとても明るく、面白いやつだ。好奇心旺盛でこいつのせいでいろんな人によく注意される。いい迷惑だ。その昴が、いつもと同じ質問をしてきた。隼人は待ってましたとばかりに、6限目全てを使って考えた、遊びの計画を喋り始めた。いつの間にか、隼人の周りにはいつものメンバーが集まっていた。 「いいか、みんな。今日はいつもと違った遊びをしようと思う」 隼人はみんなの目を見て喋った。 「何だよ、改まって。そんなに未体験な遊びなのか?」 そう聞いてきたのは、5人の中で1番賢い、生原賢介だった。賢介はモバイルオタクで、いつもモバイルパソコンを持ち歩いている。将来は物理学者になると豪語しており、理科関係はお手の物である。 「まあまあ、賢介。今から言うから」 隼人が答えた。何故か不思議な笑いを伴って。 「なに? その笑い。気になるじゃん。早く教えてよ!」 そう言って隼人を急かしたのは、有村俊太だ。勉強も運動もイマイチだが、人一倍ロマンティストである。 「だから、今から言うって」 「……」 片隅で1人、無言のやつがいた。小林琢弥である。別に仲間外れになっているわけではない。ただ単に、琢弥がクールなだけで人を寄せ付けないオーラを放っているだけだ。イメージ通り、勉強も運動もかなり出来て、女子にもモテている。 「じゃあ言うぞ。今日の遊びは……不法侵入だ」
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