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隼人は先生や周りの生徒に聞こえないように語尾を小さくした。隼人はみんなの反応を伺っているが、その反応は客観的に見れば、あまりにも冷めていた。
「不法侵入って……。いつもと同じじゃねえかよ」
生原もやはり、『不法侵入』という語句を小さくし、不満な顔をして、隼人に言った。すると隼人は、ふくみ笑いをして答えた。
「ふふっ。今までとは比べものにならないような、スリリングな不法侵入だ」
「スリリングな不法侵入!?」
昴が聞き返したが、思わず大きな声を出してしまった。
「……!」
昴は目を見開いて、慌てて口を閉じて、声を制した。
「バカっ!」
隼人は安藤に注意しながら、周りを見渡した。すると、周りの生徒たちが一斉にこっちを向いてきたのである。その光景はどこか鬼気迫るものがある。
「いや、何でもないんだ……。ははっ」
隼人は笑いながら弁解した。
「これからは注意しろよ、昴」
隼人が言うと、
「ごめん……」
と、昴が申し訳なさそうに謝った。いつも明るい昴がこんなくらい顔をしているのを見ると、こっちまで気まずくなる。
「まあ、気にすんなって!」
隼人は笑顔で、昴の肩をポンと叩いた。
「そうそう、気にすることないよ! 隼人はめったに怒らないからさ」
俊太が満面の笑みで、昴に言い聞かせる。
「それ、フォローになってんの?」
生原が少し考えて、俊太に言った。
「……なってないね」
俊太が照れたような顔で、下を向いて答えた。一瞬、間が空いたが、ここで今まで口を閉ざしていた琢弥が口を開いた。
「で、その不法侵入の内容は?」
「そうそう、内容ってのは……」
隼人が次の言葉を口にしようとした時、
「おまえら、席に着け。HRだぞ」
他の生徒はみんな席に着いている。再び、生徒の視線が5人に向けられる。
「じゃあ、続きは放課後な。校門前集合ってことで」
隼人がみんなに呼びかけた。
「了解」
「おう」
「OK!」
「……分かった」
各々が返事をしたが、琢弥は相変わらずクールな返事だ。
HRの間も、隼人は窓の外を眺めていた。太陽はまだ茜色に染まっていない。
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