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そんな会話を続けてたらいつの間にやら近所の公園に着いた
8月も真っ只中だというのに、僅かな紫陽花がまだ道端を彩って
そっと葉を捲れば小さなカタツムリ
梅雨の名残が所々に残っていた
「ねぇ、遊ばない?」
「…は?」
な ん だ と!?
「どうせ家の近くなんだしさぁ」
「え!?」
ばさっ
緑の傘が舞い上がった
ふわり ゆらり
雨を受け止め光を浴びて
ぱたぱた ぽたぽた
きらきら きらきら
ことん、と音も無く着地する
この数瞬がひどくゆっくりに感じた
「ヒャッホーイ!!」
ばしゃばしゃ走りまわってる
子供か…オマエは…
…か、可愛いなんて、思わないんですからねッ!!
「和もおいでよーっ!!!」
「嫌ですよ!濡れたく無いッ!!」
「いーじゃんッッッ」
ふわっと黄色い傘が私の手から離れて
手に温度を感じた
……思考回路停止。
「あひひゃぁ~☆びしょびしょっ!!!」
「ヒッ!!冷たッ、おい何すんだよッ!!!最ッッッ低!!!!!」
気づいたらひんやりとした…いや、ベッタリとした感触が……
「冷てぇ~フゥッ♪」
「なんだよ…ちよ、も、あーマジで最低だよこれ…う…、あーもうッ!」
本当に最低…最低最低最低!!
でも、そんなとびきりの笑顔を向けられたらなんかもういいやってなっちゃうじゃん
ズルい
「あひゃっ……ねぇ、見て見て綺麗」
馬鹿が見た方向を見れば光がカーテンの様に差している
こういうのを天使の階段って言うんでしたっけ…
陽が差しても尚、止まない雨
狐の嫁入り
きらきら きらきら
アナタと私に降り注ぐ
「綺麗…」
本当に綺麗
降り注ぐ雨がまるで祝福されてるみたい
「…和」
「…ん?」
名を呼ぶ声に振り返ったら…
何時に無く真剣なアナタの顔
そして…
2年前の夏休みの事。
正直、その後は覚えてない…。
ただ…
ただ…その時凄く嬉しかったのは…確かなんです。
END
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