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結局、荷物は八雲に取られてしまった。別に構わないのに。
いくら初期設定が雪さんだったからって、性格をトレースする必要はないのに。
ぶつくさと言いながら、俺はダイニングの飾り付けを始めていた。
「あんたも知っての通り、八雲は無口無表情だなんて描写してきたけれど、無表情なだけで別に無口というわけではない。これは一重に、物語の進行の都合上、途中から喋らせなければ物語が進まないからだということを理解していてほしい」
「し、信二さん……びっくりするので急に喋らないでくださいよ……」
隣で俺が乗った椅子を押さえてくれている幼女が言う。
畝鎌明。
金髪ロングを後頭部にて結ったポニーテールを揺らしながら、目を合わせたらば、笑顔を振り撒いた。
神殺しの仲間ではあるものの、一番の目的は、どうやら俺を幸せにすることらしい。
ちなみに、今現在こいつの力で幸せになった試しはない。
それでもこうして、左肩から上に挙がらないから、椅子を使って肩を挙げなくとも良い高さに合わせてくれたりと、優しい一面を覗かせたりする。
いつか一家に一台の時代が来るんじゃないかって思っていたり、いなかったり。
そんな明は、俺を奇異の目で見ることなく話し掛けてくる。
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