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やがて、朦朧としていた意識が回帰してきた。
はっきりと口を動かせると感じ、頭を振ってチカチカと光る目を治そうとする。
ようやく準備が整い、二人を一瞥し、明の後ろから心配げに俺を見遣る八雲に笑いかけ、言う。
「大丈夫だ」
事実、嘘は吹いていない。
今では意識ははっきりしているし、視界も体調も良好だ。
「で、でも……」
いまだに不安の拭いきれていない明の頭を撫でる。
艶のある髪は、撫でていて気持ちが良かった。
明はだんだん不安が払拭されてきたらしく、強張りが解かれていく。
「ダメだったら正直に言うさ。それに、本当に具合悪かったら、真っ先に河南子が出て来るからな」
こんな大事になりながらも出て来ないならば、大丈夫だと判断しているからだろう。
だから、大丈夫。
「準備を続けよう」
俺は大丈夫だ。
「………具合悪かったら、いつでもおっしゃってください……」
「ありがとな」
「無理しちゃダメですよ?」
「安心しな」
「ここで諦めたら、試合終了ですよ」
「安西せんせ……っていやいやいや」
いつからいやがった河南子。
てゆーか当然のように現れんなや。
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