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瞬きするのも忘れて、風が流れたいった方を凝視する。
「……はな、びら……?」
口から零れた言葉が他人の言ったようなものに聞こえた。
一瞬、紫に見えたのは淡い青の花弁。
秋空のように落ちついた色のそれは、不思議なことにアスファルトの道路に突き刺さっている。
ゆっくりと風が吹く。
その風に逆らうことなく、花は揺れた。
その花があのような音をたてて飛ぶとは思わなかった。誰かが何かしたのかもしれない。
ぎこちなく視線を戻す。
猫は相変わらず鳥居の入り口で微動だにせずに座っていた。
遠くでまたあの綺麗な音が響き始める。
耳の痛みが現実なのだと示し、気のせいだとごまかすことはできなかった。
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