壱:鳥居のムコウ

13/13
前へ
/13ページ
次へ
――タン タン ――シャン 綺麗な音と綺麗な音が交じる。 祭のような囃子(はやし)だけど、神楽のように澄んだものに聞こえた。 浮き世離れした音を聞きながら、きつく掌を握る。 強情なのはおばあちゃんの受け入りだ。 何とかしたくもないが、死にたくもない。 これが大げさな表現でありますよーにっと心の中だけで手を合わせる。 ――タタタタタ 残す所、十の鳥居で急激に早くなる音。 気合いは空元気だが、根性はある方だ。 通学鞄以外の荷物は全部地面に置いて、こちらに近づいてくる何かに身構える。 ゆっくりと深呼吸をする。 おばあちゃんはいつも不思議なことを言っている。 ――この世に存在しないものはない――見えない、だけ 猫は何も見えてないようにゆったりと尻尾を振った。 ――ダンッ!
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加