壱:鳥居のムコウ

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最後に、今日は一回も転ばなかった。 気をつけてはいるが、何があっても、何もなくてもこけてしまう。今では、怪我一つ作らないようなこけ方も身につけた。 川に落ちておぼれそうになったことも、歩道から飛び出して車にひかれそうになっても、こうやって生き残っている。 でも油断してはいけない、と帰り道を用心深く歩いているのが今。 家はもうすぐそこだ。 少女はお菓子の入った袋を抱えなおす。 皆も喜ぶだろうとゆるむ口を我慢することはできなかった。 にゃー、と猫の鳴き声。 どこからだろうと思っていたら、黒猫が少女の目の前を通り過ぎた。
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