1人が本棚に入れています
本棚に追加
そのカルタからさらに向かい側、俺の相手に視線を上げる、自分とあまり変わらない年頃の、短髪の細めの男だった。
青ざめたを通り過ぎ、白々と顔色を変えて、怯えたような目でこちらを見ていた。
多分俺も、同じ様な形相であろう。
皆同じで、理解不能で。
皆同じで、混乱していて。
黙り込んで。
相手を見合い。
誰一人声を上げず。
独自に思考する。
利き腕を失いたくなければ、こいつに勝つしか無いのだ、勝つしか、無い。
だけれど、勝ってしまえば。
勝つという事は。
相手の利き腕を、奪ってしまうのと同じで、どうかしてしまえば、出血の具合によっては、相手の命さえ、奪ってしまうのと同じで。
どうだろうか、自分は、俺自身は、例えまがいなりにも、他人の腕を、命を犠牲にまでして、生き抜く必要性はあるのだろうか。
高校を卒業して、就職が見つからず、約半年間アルバイトをしながらだらだらと生活している自分なんかに、そんな価値は無いんじゃあ、ないか?
もしも相手が、俺なんかよりよっぽど有能で、全能で、将来企業や産業に期待されているような人間だったら、どうだろう?
そうなら、相手を生かすべきだ。
そうでなくても、相手を生かすべきだ。
俺の命は、そこまでの価値は無い。
最初のコメントを投稿しよう!