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突然の怒声。
そして。
『ともだちたくさん!』
話の脈絡からすれば意味不明な。
そんな言葉が流れて。
唖然となってはいたものの、それは最後の一言とは繋がっていない事を看破して、一枚目の読み札を読んだと考えて、即座にカルタの取り札に目をやった。
『あ』から『わ』までの四十四枚の、アントランダムに並べられた札の中から、『友達沢山』の頭文字、『と』の札を探す。
と…と…と…。
あった!
俺の位置から見て右から四列目。
俺の位置から見て前から三列目。
絶好の位置じゃねえか!
反射的に、手を出してしまった。
機械に拘束された利き腕を。
数十秒前に手を出さないと決意した事は、怒声によって吹き飛ばされ、忘れていて。
あたかもそれが、録画された音声の、前もって用意された思惑通りのように。
ガチャンと小さな音を鳴らしながら。
千枚通しごと手の平を、取り札の上へ思いきり叩きつける。
ダンッ!と気持ちの良い音と共に、読み札と下地の畳の奥まで千枚通しを突き刺しす感触を僅かながら感じて。
一瞬の優越感を感じて。
瞬間の優越感に浸って。
間髪入れず、他の感覚が俺を襲った。
優越感とは一切無縁の、むしろ逆の。
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