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蜂の巣、とは良く言われる比喩ではあるけれど、そんな比喩も可愛らしくなるような激痛で。
必死に痛みの波を静めようと。
必死に痛みの波を沈めようと。
左手で右手首を掴む、いや、手首はもう機械に被われている部分であるから、正しくは右手首があるであろう部分の金属を力一杯掴んでいるだけなのだけれど、結局のところ、実際は、ほとんど無意味に力んでいるだけである。
こんな行為で痛みが静まるなら苦労はしないのだ、力んで済むなら病院は要らないのだ。
いやまあ、要るのだけれど。
「あああああぐぐっ…!」
さっきから視点は、ずっと右手を捕らえていて、一本一本こちらから見える限りの針が、半分以上手の甲に食い込んでいる。
じわじわと血も、次から次へと浮かんできて、流れ出す。
指は動かす気すらわかない。
だってもう、こんなに力一杯力んでいるにも関わらず、右手の指は震えているだけなのだから。
ふるふると、震えて。
血液の流れの手助けをするように。
全意識をそこに集中させて、これ以上痛みを悪化させないように、気を配って。
そんなとき。
いきなり視界が途絶えた。
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