カルタ

17/31
前へ
/31ページ
次へ
それは一瞬で。 目の前が真っ赤に染まって。 目の前が真っ黒に染まって。 意識が途絶えたのかとも錯覚したのだけれど、途絶えたのなら思考だって途絶える訳なのだから、右手の激痛だって途絶える訳なのだから、関係無く。 左目にかかったものを左手で擦って拭いて、最初に映ったのは、まあ未だ千枚通しに突き刺されたままの右手なのだけれど、さっきまでの様子とは、まるで違ったといえよう。 そりゃあもう、辺り一帯に。 見渡す限りに。 ほとんどゼロ距離で、この十数分で見飽きたような血と、目の前で散々と吹き出す血煙を、浴びていた。 真横。 すぐ隣で、金属音が鳴る。 肉を磨り潰し、血を含み、人間の利き腕をもぎ取るという宿命を終えたそれは、畳に着地して、静止した。 それはとても満足そうに。 それはとても禍々しく。 持ち主から引き裂かれた腕は、それでももがくように、血液を噴出させて。 剥き出した骨を振り回しながら。 ゆっくりと静止する。 持ち主と同じように。 視線を少し奥へと進ませれば、ぐちゃぐちゃになった肩の関節部分から奥を見せびらかせながら、舌をだらしなく出して意識を失った金髪の男が倒れていた。 「うあああああああああああああっ!」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加