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それは一瞬で。
目の前が真っ赤に染まって。
目の前が真っ黒に染まって。
意識が途絶えたのかとも錯覚したのだけれど、途絶えたのなら思考だって途絶える訳なのだから、右手の激痛だって途絶える訳なのだから、関係無く。
左目にかかったものを左手で擦って拭いて、最初に映ったのは、まあ未だ千枚通しに突き刺されたままの右手なのだけれど、さっきまでの様子とは、まるで違ったといえよう。
そりゃあもう、辺り一帯に。
見渡す限りに。
ほとんどゼロ距離で、この十数分で見飽きたような血と、目の前で散々と吹き出す血煙を、浴びていた。
真横。
すぐ隣で、金属音が鳴る。
肉を磨り潰し、血を含み、人間の利き腕をもぎ取るという宿命を終えたそれは、畳に着地して、静止した。
それはとても満足そうに。
それはとても禍々しく。
持ち主から引き裂かれた腕は、それでももがくように、血液を噴出させて。
剥き出した骨を振り回しながら。
ゆっくりと静止する。
持ち主と同じように。
視線を少し奥へと進ませれば、ぐちゃぐちゃになった肩の関節部分から奥を見せびらかせながら、舌をだらしなく出して意識を失った金髪の男が倒れていた。
「うあああああああああああああっ!」
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