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「あ、あの」
「今日は付き合ってくれてありがと。電車?」
「あ、はい。じゃなくて!」
「俺も。駅まで一緒に行こうか」
だからっ!
「今日は俺のおごり。予想以上においしかったから」
あたしに見せる甘ったるい笑顔にこっちまで緩みそうになって・・・・・・、
あたしはきゅっと口を閉じた。
なるほど、これは「釣るまでは魚に餌を」ってことね。
ちゃーんと分かってるんだから。
だから、あたしはにっこり笑って「ご馳走様です」と言いながら財布をカバンの中にしまいこんだ。
「どういたしまして。ところで稲森なに?」
「はっ?」
「だからぁ」
あー、この呆れるような言い方!
わかってるわよ、何を聞きたいか!
ってか、何で言わないといけないの?!
そう思うけど教えないなんて選択肢を選ぶことは出来なくて。
「稲森菜々美(イナモリ ナナミ)です」
「俺は榊拓海(サカキ タクミ)、海外促進部に先週から配属されてね」
知ってます。
さっき、仕事中に琴ちゃんから聞きました。
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