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翌朝も綺麗にメイクを施して、あたしは受付でにっこり笑う。
「おはようございます」
これって本当に人形でも問題ない気がしてくる。
何度も繰り返し言う挨拶に返ってくる言葉も同じもの。
だけど、これがあたしの仕事。
ちゃんと笑って笑顔を絶やさず――
「おはよう」
ほかの声は気にならないのに、
この声にだけはあたしのこめかみがピクリと反応してしまう。
「無事帰れたみたいで安心したよ」
「ここは日本ですよ?」
ちゃんと受付スマイルできてるかしら?
なんか、頬が痙攣しそうだわ。
「日本だって危ないよ」
一番危ないのはアンタでしょ?
といいたいのを我慢してあたしは、
「心配してくださってありがとございます」
ともう一度にっこり笑うと、上から小さなため息が降ってきた。
「それ、可愛くないから」
「はい?」
顔を上げるとあたしの頬に伸ばされる大きな手が――。
だから、あたしは咄嗟に自分の両手で頬を覆ってキッと睨む。
すると彼は「ぷっ」と噴出してその手で自分の口を覆ったりなんかしちゃって。
「それは可愛いよ」
「な、何なんですか!」
「そのままの意味」
彼は笑いをかみ殺しながらそう言うと、あたしの頭をポンっと叩いて奥のエレベーターに歩いていった。
本当に何なの?!あの男は!
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