高嶺の花

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受付の仕事は忙しい時と暇なときの差が激しい。 そして、今は暇な時間。 お客様は来ないし、だからって座ってなきゃいけないし、私語をすればお局様に嫌味を言われるからじっと座ってお人形。 「奈々美、休憩しようか?先にいっていいよ」 「ありがと。じゃ10分したら交代ね」 あたしは相方の琴ちゃんにそう言って、化粧ポーチ片手に化粧室へ。 どうしてもお昼を過ぎちゃうと、お肌のテカリが気になっちゃう。 あたしは受付嬢。 受付っていうのはいわば、会社の顔。 だから綺麗に直して、グロスも品よく少なめに。 「よしっ」 メイクをすると自然と気合いが入るよね。 残りの時間はあと5分……。 「ジュースでも飲もうかな」 いつもはあまり飲まないんだけど、今日はさすがに暑いからのど渇いちゃった。 受付ってドアのすぐそばだから空調がいまいちで暑かったり寒かったり。 そう思って自販機に歩いていくと、自然と聞こえてくる声にあたしは足を止めた。 「稲森ちゃんって綺麗だよな」 「彼氏いんのかな?」 「いるって噂だけどな」 「やっぱなぁ~」 こんな会話も日常茶飯事。 っていうか、居ないわよ! でも、そんなことこいつらに訂正しに行くほどあたしも馬鹿じゃない。 仕方ない、もう一階上の自販機に行こうかな。
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