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夜。快晴。
絶好の天体観測日和だった。
天の川まではっきりと見える。空に散りばめられた宝石は、その輝きを強めたかに見えた。
振り向く。
『君人くんがそこにはいた。』
『初めて見る私服姿は、私の心の鐘をいっそう早く打ち付けた。』
『あ……かっこいい…!』
『「やあ、綺麗だよね、ここ」』
『私に言ったのかと思った。そんなわけないと思いつつも、若干の期待をしてしまう。』
『「うん…綺麗だね」』
『会話が続かない。緊張のしすぎ? 何か、何か喋んなきゃ……。』
『君人くんが口を開く。』
『私は……私は、』
『想いを告げるために、口を開き――』
そこで気づいた。
私は、丘の上で立ち尽くしていた。
え? 何? 一体、何が起こっているの?
さっきまで君人くんがここにいたはず……っ!
妄想だというの?
全部?
どこから?
混乱している。頭が働かない。
一体どこから?
分からない。思い出せない。
どうして? 何で?
私はふらふらと丘の上を歩く。
丘のすぐ近くにある竹林が目にはいる。
七夕。告白。
そうか……
私は、
私は、呼び出せなかった…………?
その時。
私は丘から足を踏み外し……
竹林にかけられた短冊が視界に入る。
落ちていく。
たったひとつの願いを叶えるチャンスもないまま。
落ちていく。
この日から、私は――
七夕が、大嫌いになった。
…―…―…―…―…―…―…―…―
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