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確かに藤堂は、童顔・背が低い・線が細いの三拍子揃っている。外見的には子供と言ってもおかしくない。
だが彼は、仮にも年端二十三の若者。故に今の台詞は、屯所内で影に広まっている"平助に言ってはいけない一言"である。
藤堂の額に青筋が立った。
「誰が子供じゃあああ!」
今にも殴り掛かろうとする彼を、沖田と梅戸の二人掛かりで抑えつけた。
「落ち着いて平助。相手は年半分の子供。大の大人が手を上げてどうするんですか!」
"大人"という一言に反応して、藤堂は振り上げていた拳をゆっくりと下ろした。
単純な一言で怒りを鎮められるとは子供っぽいことこの上ないのだが、これを言ってはどうなるかを知っている為口には出さない。
一応落ち着いた藤堂を解放し、沖田は少年の前に立つと、身長差を埋めるように屈んだ。
「私は新選組一番隊組長、沖田総司と申します。君の名を教えて下さい」
すると少年は、やっと真面な話ができると思ったのかぴんと背筋を伸ばした。
「田村銀之助、と申します。兄一郎と共に入隊試験を受けに参りました」
兄と来たということは、その一郎とやらは今文武館で面接中ということだろう。
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