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沖田は屈んでいた腰を直し腕を組み刹那の間唸っていたが、やがて意を決したように顔を上げた。
「よし。平助、銀君に防具と竹刀を貸してあげて下さい」
「へ?どうして?」
「試合をするんです」
「はあ!?」
超絶な笑顔で言う沖田に、藤堂は頓狂な声を上げた。
沖田は藤堂に身を寄せると、他の者には聞き取れないような小さな声で言った。
「試合をして、徹底的に負ければ、あの子も諦めがつくでしょう」
成程、追い返す為の作戦ということか。
藤堂は短く応え、防具やらを取りにそそくさと駆けて行った。
「梅戸さんはお仕事を続けて下さい。銀君、試験を行うのでこちらへ」
「はい!」
元気に返事をする田村。
嘘っぱちの入隊試験であることなど露知らず、健気に沖田の後を追って行った。
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