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―――――……
――……
文武館へは入れないので、門付近の開けた場所を選び、沖田と田村は向かい合った。
借り物の防具をしっかりと着込んだ田村。少し大きいが動きにくいということはない。
それだけ藤堂が小柄だということだが。
対する沖田は先程と同じ着流しのままで防具は付けていない。その辺を散歩している町人のような格好だ。
互いに礼を交わし、竹刀を構えた。
「両者構え……始め!」
「やあぁぁぁ!」
成り行きで審判となった藤堂の声を合図に、田村は声を上げて向かっていった。
大きく振りかざして、面を狙いにいく。
それを沖田は軽い体重移動でかわした。
田村は空いた胴目掛けて竹刀を横に振った。
バシィィィン!
乾いた音が響き渡った。
果たしてどちらが勝ったのか。
それは、沖田が竹刀をしまい、田村が左手首を押さえてうずくまっている光景を見れば一目瞭然だろう。
「勝者、沖田」
竹刀を持つ小手を狙った一本。
あっという間の決着だった。
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