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土方は濡れた足袋を脱ごうと屈み、沖田の向こうにちょこんと座っている少年を見つけた。
「その餓鬼は誰だ」
"餓鬼"とい言葉に田村は顔をしかめる。
「入隊希望だって。さっき総司がこてんぱんにして、今から追い出すとこ」
「そうか」
興味なさげに返事をして、土方は隣室へと消えて行った。
「さあ、帰りますよ、銀君」
促され、渋々田村は立ち上がった。
まだ諦め切れないという表情を顔一杯に浮かべていたが、負けたことには相違ない。あれだけ簡単に負け心を挫かれれば凹むというもの。
これぞ沖田の作戦勝ち――となる筈だったのだが。
「沖田さん」
横槍を入れたのは、今まで無口を決め込んでいた山崎だった。
彼は外で起きた出来事を見ていない。故に、実に空気の読めない発言が飛んで来た。
「入隊者選別における重点事項は性格・人望ですよね?
稽古は入隊後に行われますし、剣の腕は特に重視されてはいない筈ですが……」
藤堂は青ざめ
沖田は山崎を睨み付け
田村の表情はぱっと明るくなった。
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