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「椿のような……誠の意気を見てみたいんだ」
いつか、夢現の丘で出逢った人が言っていた。
――首を切り 燃え朽ち果てる 藪椿
咲くる姿は 誠の如し
残酷なようでいて、それでも尚心に残る。
陰気な詩など全く覚えてはいないが、この短歌だけは頭の中にくっきりと刻み込まれていて。
「隊規は守ればいい。違反した人は――それまでの人だったっていうだけ。
それに、武士として戦場で死せるならそれも本望でしょう?」
隊旗・隊服に刻まれている文字。
あの時の短歌と同じだった。
「この年で命が惜しければ、きっと七、八十でも惜しい」
だから。
だから……。
「ぐわっはははは!!」
突然。
そう、あの時と同じような唐突さで、襖を隔てた隣の部屋から豪快な笑い声が聞こえてきた。
先刻、土方が消えて行った部屋だ。
聞こえ様によっては相当不気味な笑い方だったが――。
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