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「千年前の青空は、どんな色をしていたと思う?」
それはもう、唐突に。
何故、何処からその疑問が降って湧いて出たのかわからなくなる程唐突に問い掛けられた。
「そんなの、生まれてもいないんだからわからないよ」
即答すると、彼は大きい目を一瞬更に大きく見開き、そしてふっと細めた。
「銀君らしい答えッスね。まるで夢がない。もっとこう、想像力を働かせて……。
例えばどす黒い雲で傘ができていたとか、空の色が始終紅かったとか、夜の明けない暗闇だったとか」
彼らは小高い丘の上に居た。
風に乗り、若草の香りが降り注ぐ。とても心地いい。
木々が不規則に生い茂る中、不自然に開けた草原に寝転んで、今し方話題にもなっていた晴天を見上げていた。
身長の差が歴然としている、大人と子供。
空想的な質問を投げ掛けたのが大人で、現実的な回答を言い切ったのが子供だった。
実にあべこべで、実にに滑稽で、実に奇妙な二人組。
大人は自身の思想を押し付けるが如く熱弁しているが、子供はそんな事どうでもいいと言う風に聞き流し、風の芳香を堪能しているようだった。
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