一年契約

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  スパーン! 隣室との境界が、勢いよく開かれた。 「なかなか骨のある子がいるじゃないか! なあ、トシ」 現れたのは、大口を開けて眩しい笑顔を放った男。 田村から見れば"おじさん"の領域。 けれども何故か彼が現れた途端、田村以外の皆が姿勢を正した。 「盗み聞きですかぁ、近藤さん」 沖田が冗談交じりに言えば、今度は田村が姿勢を正す番だった。 「近藤さん……き、局長さんですか!?」 新選組局長近藤勇といえば局中一の有名人である。 まさか会えるとは思ってもみなかったので、背筋はぴーんと伸びきってしまっている。 「君、名は何と言う」 「た……田村銀之助と申します」 両脚を揃え、両手を添えて、丁寧に御辞儀。  
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