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「で、その詩を……銀君、聞いてるッスか?」
返事がないことにようやく気付いたのかがばっと起き上がると、小さな彼はすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
子供特有の、愛らしい寝顔。
「夢、無いッスね」
再び草の上に転がると、彼はそれこそ子守唄でも歌うように、詩に旋律を乗せた。
空を見上げれば
涙も消えていく
澄み渡ってた青空も
曇ってしまった
失くしたからこそ
気付くこともある
命の鎖は切れたきり直らない
壊れたものはもう
もとには戻らない
偽物の心など
壊れてしまえばいいんだ
時を越えて辿り着いた
結果がこの答えなの?
いつだって傍に居た
ものも失くしてしまって
だからきっとわからない
「ねえ」
そこで初めて、子供の方から口を開いた。
いつの間に目を覚ましたのだろう。
大人は途中で歌うのを止めた。
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