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「その陰気な歌、止めてくれない? 折角いい気分だったのに、台無しなんだけど」
「陰気な歌ッスか」
指摘されてか、歌うのを諦めて立ち上がる大人。
着物に付いた枯草を払い、大きく伸びをした。
そして、子供に背を向け、独り言のように呟いた。
「首を切り 燃え朽ち果てる
藪椿 咲くる姿は 誠の如し」
「え?」
何故、短歌を詠んだのだ。
今の言葉は、本当にこの男から発せられたものだったのか?
彼は、そのまま丘を下る道を歩き出した。
「待って」
子供が引き留める
大人は振り向かず足だけを止めた。
「名前、まだ教えてもらってないんだけど」
「名前? 僕の名を聞いたッスか?」
お前以外に誰か居る。
「僕の名前は福太郎。生きていたら、また何処かで逢いましょう」
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