足跡

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器の底が見え、カリカリのパンの耳を噛んで飲み込むと、俺は立ち上がった。 壁に貼られた写真が目に入る。 茶色い髪色の男女二人が、顔を寄せ合って写っている。 俺は思い切り写真を引き剥がし、思い切り床に投げつけた。 金目の物を探す。 片っ端から引き出しを開け、棚を開け、クローゼットを開ける。 部屋の角に置かれた半透明のボックスが、始めから気になっていた。 開けると、何を意味する入れ物かすぐに分かる。 男との、思い出の箱だ。
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