6863人が本棚に入れています
本棚に追加
「しぃ?」
私を愛しそうに呼んで首を傾げている彼。
傾いだせいで、肩口にさらりと薄茶の髪が流れた。
それが目に入って私は……
「――きょう、すけ」
そっと名前だけをなんとか口にした。
だけど、口にしてからそれがとてつもなく恥ずかしくなってまた俯いた。
そんな私を1段上からキュッと手を伸ばして、恭介の腕に私は抱きしめられた。
「離したく、ないな……」
頭上でぽつりと呟くそんな声が聞こえたけれど、私はやんわりと彼の胸板を両手で押して
「ごめんなさい。お邪魔しました」
ぺこりと頭を下げて、玄関の取っ手を握ってドアを開けた。
振り返らずに出て行く私に
「絶対。また会いに行くよ」
そんな声が後ろから響いた。
最初のコメントを投稿しよう!