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「嘘でしょーーー!?」
そんな大声で叫ぶのは私の人生の中で久しぶりだった。
だって、齢26歳。
適齢期とも囁かれるこの年の女性が大声で叫ぶこと自体、まず問題である。
しかも見知らぬ男性の前で。
否、知らないまで言ってはいけない。
よくは知らない。
顔、声、話し方
それから体の相性。
それだけは分かっている。
それだけを知っている間柄ということが問題だ。
小説や漫画なんかで
『うっかりやっちゃった!?
でも覚えてない!? どうしよう……!』
なんて展開。
まさか自分の身に起こるとは思ってなかった。
いや、実際には私の場合は、自分からお願いして、しっかりヤッチャッタことも覚えていて、そしてかすりも忘れていないってこと。
もちろん、目の前の彼もそうに違いないはずで。
覚えていない方がいっそよかったのに……
現実ではしっかり覚えていたことに
「嘘でしょーーーー!?」
そう叫ぶしかなかった。
どうして私の脳みそは昨日のことを忘れていなかったんだろう?
絶対、ぜーったいに忘れていると思ってた。
当てが外れた。
完全に。
ガクッと肩を落として、見るからに落ち込んでいると
ウーーンッ
って力いっぱい体を伸ばしてから、隣に眠る男が上半身を起こして目を覚ました。
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