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少し擦れた色気のある声で、私の名前を呼ぶ。
その声に、言葉一つにドキドキしながらもそれを隠すようにして叫んだ。
「おっ、起きてますから!」
見つめられてタジタジになってしまった私は、その薄茶の瞳から逃げたくなって
ドンッ
と彼の胸板を押して慌てて離れた。
そのまま背を向けて私はベットの下に散らばる下着を掴むと、急いでパンティを履くことにした。
右足を差し入れたところで後ろから彼が
「まだ居てよ……」
私の腰を両腕で引き寄せて、私の長い黒髪に顔を埋めた。
クラっと来そうになる。
普通の女ならそうなるはずだ。
抱きあった男に、朝から『傍に居て』と言われたら。
ましてや後ろからしがみつかれたら、きっと……
だけど
「ごめんなさい。私、もう行かないといけない」
彼の腕をやんわりと解いて背を向けたまま答えた。
その勢いで、先程の続き……着替えを続ける。
「また、会える?」
着替え終わって振り向いた私を見上げて、彼は私の髪の毛をひと房掴んでそう尋ねてきた。
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